ソン・ガンホと再会した役所広司、「日韓、映画でよい交流が続いてほしい」
2024年07月23日

ソン・ガンホ(57)と役所広司(68)は、それぞれ韓国と日本を代表する俳優だ。
ソン・ガンホは、『ベイビー・ブローカー』(2022)で、「第57回カンヌ国際映画祭」の主演男優賞を受賞し、役所広司は、『PERFECT DAYS』(2024)で、「第76回カンヌ国際映画祭」の主演男優賞を受賞した。
昨年5月、カンヌ映画祭で初めて会った2人が約1年ぶりにソウルで再会し、映画や演技に関して話をした。21日午後、鍾路(チョンノ)区のある映画館で開かれた『PERFECT DAYS』のGV(観客との対話)でだ。
役所広司は、ソン・ガンホが主演した作品の中で、最も記憶に残るものとして、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(2003)を挙げ、「ユーモアがありながら、緊迫感があふれる作品だ」とし、「映画序盤部のソン・ガンホ俳優が飛び降りるシーンを見ながら、笑いをこらえることができなかった」と述べた。
それと共に、「ソン・ガンホさんの演技を見ながら、そのキャラクターが実在するような印象を受ける」とし、「ユーモアと真剣さを行き来する間隔が魅力的な俳優だ」と評価した。
ソン・ガンホは、『うなぎ』(1999)で役所広司が演じた主人公山下が妻を殺害し、警察署を訪ねて自首するシーンを忘れることができないとし、「その中で主人公の苦痛や憐憫をそれだけの深みで表現できる俳優は、全世界で役所広司しかいない。今も、ポン・ジュノ監督と会えば、時々その話をする」と述べた。
役所広司は同日、ソン・ガンホと会話しながら、頻繁に冗談を言ったり、大笑いしたりするなど親しい様子を見せた。
彼は、「ポン監督が以前、細田守監督と対談した時に漫画家の下で働きながら、絶えずいじめられる助手役に、自分をキャスティングしてほしいと話したことがある」とし、「ソン・ガンホさんが漫画家役を務め、私に飛び蹴りをするシーンが思い浮かんだ」と述べ、会場が笑いに包まれた。
『PERFECT DAYS』は、ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督が演出した作品で、東京の公衆トイレの清掃員・平山(役所広司)の話だ。
平山の日常を、ドキュメンタリーのように淡々と描きながら穏やかな感動を引き起こし、好評が続いている。3日に韓国で公開された『PERFECT DAYS』は、芸術映画としては異例の早さで観客を集め、5万人突破を目前にした。
ヴェンダース監督が、東京の公衆トイレのリモデリングプロジェクトを記念する短編映画を作ってほしいと提案され、長編を演出すると逆提案し、『PERFECT DAYS』が誕生した。
役所広司は、「ヴェンダース監督ではなくポン・ジュノ監督が映画を撮ったとすれば、おそらくソン・ガンホさんが平山役を担っただろう」とし、「早く動いた人(本人)が勝ったというわけだ」と冗談を言ったりもした。
ソン・ガンホは、『PERFECT DAYS』について、「演技の深さと映画が追及する人生の美しさの深みをとうてい見極めることができない」と高く評価した。
『PERFECT DAYS』で平山が出勤途中に車を運転しながら感情が込み上げたように、笑いと涙が混じった表情を浮かべるシーンは、役所広司が見せた最高の演技に挙げられる。
ソン・ガンホは、そのシーンを撮った時、ヴェンダース監督が役所広司に何と注文したのか気になると述べた。
役所広司は、「台本には、“平山の目に涙がにじんでいるようだが、悲しいようには見えない。彼は自ら選択した仕事場に向かう”という詩的な文章があった」とし、「ヴェンダース監督が、『泣かなくてもよさそうな気がする。笑ったほうがいい』というので、『頑張ってやってみる』と演技に臨んだ」と振り返った。
このシーンでは、ニーナ・シモンの楽曲「Feeling Good」がBGMとして流れる。役所広司は、撮影現場でこの楽曲を実際に流して演技したとし、「(楽曲に込められた)シモンの魂に影響されたようだ」と述べた。
映画の中の平山は、木の葉の間から差し込む日差しを旧式のフィルムカメラで撮るのが好きな人物だ。役所広司は、「若い頃、占い師にカメラマンになれば成功すると言われて、高いカメラを買ったことがある。しかし。機械音痴だからピントが合わなかった。最近はスマートフォンで写真を撮っている」と笑った。
役所広司は俳優の人生について、「撮影が終わると同時に、『次はもっと頑張らなきゃ』という思いで、演技を続けてきた。その結果、40年あまりが流れた」と述べ、ソン・ガンホは、「俳優は、見えない完ぺきさに向かって絶えず走っている職業だ」と、相槌を打った。
役所広司は対談を終え、「近い2つの国である韓国と日本が映画を通じてよい交流を続けてほしい」と述べた。