カン・ドンウォン主演映画『設計者』…真実と偽りのあいまいな境界で繰り広げられる綱渡り
2024年05月24日
すべての事件は、表に現れたこととは違う内幕を隠しており、ここには誰かの陰謀が存在していたりもする。
事件の全貌を把握しようとする人は、陰謀が敷かれている可能性も念頭に置かなければならないが、陰謀論に陥るのは危険だ。
ひとつの仮説に過ぎない陰謀論に、すべての現象を説明し始めれば、理性的判断とはますます遠ざかる。人類の歴史のすべての大事件が、裏で世界を支配する秘密団体の陰謀だという荒唐無稽な話のように。
しかしわれわれは、いつにも増して、院暴論に振り回されやすい時代に生きている。事実と偽りの境界がぼやけて、フェイクニュースが横行するSNSでは、陰謀論が簡単に力を振るう。
イ・ヨソプ監督の新作『設計者(原題:설계자)』は、われわれ社会のこのような風景を、ひんやりとした色合いで描き出したスリラーだ。
主人公のヨンイル(カン・ドンウォン)は、暗い陰謀の世界に住む人間だ。彼は殺人を請け負われ人を殺し、偶然の事故を装う職業を専門的にしている。
人を殺害しても、法の網をくぐり抜ける陰謀を設計し、実行するのがヨンイルの職業というわけだ。彼はジャッキー(イ・ミスク)、ウォルチョン(イ・ヒョヌク)、チョムマン(タン・サンジュン)の同僚3人とチームを組んで作業する。
ヨンイルにはトラウマで残った記憶がひとつある。昔の同僚(イ・ジョンソク)が見舞われた謎の死だ。ヨンイルは、この事件が自分のチームよりはるかに大きな秘密組織である“清掃婦”の陰謀だと確信している。
ヨンイルが有力者をやっつけてほしいという要請を受け、作業に着手し、話は急展開する。
予期せぬ事件が相次いで起き、ヨンイルはまた別の陰謀が自分を狙っていると感じる。ヨンイルから殺人を請け負ったヨンソン(チョン・ウンチェ)と、保険会社の職員チヒョン(イ・ムセン)は、ヨンイルを次第に迷宮入りさせる。
カン・ドンウォンは完ぺきな陰謀を設計する専門家が、陰謀の世界に深く入り込み、ついには抜け出せない姿をスクリーンにリアルに描き出す。
『プリースト 悪魔を葬る者』(2015)、『華麗なるリベンジ』(2016)、『チョン博士退魔研究所:ソルギョンの秘密(原題:천박사 퇴마연구소: 설경의 비밀)』(2023)などで、どこか軽くてコミカルな要素を見せたのとはまったく違う演技を披露する。『設計者』のカン・ドンウォンは、終始冷たく暗い表情で、彼のこのような顔は、作品の雰囲気を支配する。
本物と偽物の区別がつけづらくなった時代性を反映したこの映画は、ヨンイルの精神を支配する陰謀が、事実なのか幻想なのか、謎として残しておく。
極めて低い確率の偶然が、ぴったり合う劇中の事件は、多少作為的な感じを与えたりもする。しかし、これもまた、ヨンイルの心の中に描かれた事件である可能性もあり、きっぱりと判断するのは難しい。
イ監督が演出した2本目の長編だ。彼の長編デビュー作『犯罪の女王』(2016)は、考試生が“水道料金爆弾”に打たれながら起きる話で、日常的な素材からスリルを引き出したという評価を受けた。
『設計者』は香港映画『アクシデント』(20099のリメイク作だ。殺人事件を単純な事故死に偽装する人の話という基本設定は同じだが、陰謀論をまき散らすYouTuberなどを登場させ、時代性を反映する話に生まれ変わった。
イ監督は23日の試写会で、「われわれが何かを調べようとすればするほど、泥沼にはまる感じを受ける時がある。現在社会で多くの人が真実に到達できず、無気力と怒りを感じることもある」として、「真実を探す主人公の混乱と混とんを表現したかった」と述べた。
映画『設計者』は29日に韓国で公開される。上映時間は99分、年齢制限は15歳以上観覧可だ。