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俳優パク・ジョンス、70歳で初めてカンヌ映画祭に招待…「私にこんな幸運が来るなんて」

2023年05月30日

「16年ぶりに映画に出演して、カンヌに来られる確率はどれくらいだろうか?今朝起きても『私にこんな幸運が来るなんて』と思った」
51年の貫禄を誇る女優パク・ジョンスは、70歳で映画より映画のような経験をした。
『クモの巣(原題:거미집)』で世界最高権威の映画祭、カンヌ国際映画祭に初めて招待されたのだ。キム・ジウン監督が演出したこの映画は、「第76回カンヌ国際映画祭」の非コンペティション部門に進出し、去る25日(現地時間)、2000席あまりの規模のリュミエール大劇場で上映された。パク・ジョンスは、試写会はもちろん、レッドカーペットイベントにも参加して場を輝かせた。
カンヌで会ったパク・ジョンスは、「私は映画よりテレビドラマに特化した俳優」だとし、「ここに来るまで、本当に長い時間がかかった」と述べた。
「ある日、マネジメントの担当者がキム・ジウン監督の作品だと言って、『クモの巣』のシナリオをくれた。私は最初、『キム・ジウンって誰?』と無知な言葉を発してしまった(笑)。そして家に帰って主人にこの話をしたら、『おい、当然やらないと!どの役でもくれと言え』と言われた」
『クモの巣』は、1970年代の映画監督“ギヨル”(ソン・ガンホ)が、傑作を作るため、撮影を終えた映画を撮り直すことから始まる物語を描いた。パク・ジョンスは、ギヨルが作る作品に出演するベテラン俳優“オ女史”を演じた。
パク・ジョンスはキム監督に初めて会った時、自分キャスティングした理由を尋ねたという。これに対してキム監督は、「ディクション(発音)が良いから」と答えたという。
「普通、台本リーディングをする時、数名の俳優たちと一緒に合わせる。でも、キム監督は、一対一で面接するようにリーディングをさせた。俳優生活で緊張したことはない。さらにはキム・スヒョン作家の前でも緊張しなかった。でもキム監督の前では、ものすごく緊張した」
彼女が演じたオ女史は、70年代の俳優の日常的な姿を見せる一方で、劇中劇では、復讐に燃え、その欲望に縛られる姿を見せなければならない人物だ。映画1本で2つの演技をするというわけだ。
彼女は、「1つの作品で2つの姿を見せなければならないのが一番大きな悩みであり宿題だった」と述べた。
「また、これまでやってきたホームドラマとは違って、刀を使ったりする場面がある。こんな演技をするのが初めてなので、最初はキム監督に『出演のオファーはありがたいが、できないと思う』と言った。監督さんは『とりあえず、やってみて。私の言う通りにやればいいだけ』だと励ましてくれた。だから私は“ただ、やった”」
彼女はカンヌで『クモの巣』が公開され、“もっとうまくできたのでは”という残念さが湧いたという。「作品に参加した俳優の中で私が一番下手だった」と謙遜したりもした。
しかし映画を見ている間、自身の演技より観客たちの反応により集中した。
パク・ジョンスは「スクリーンを見ながらも、魂の半分は観客たちに行っていて、十分に楽しめなかった」としながら、「私はその時代を経験した人だから映画が面白いと感じられたが、外国の方にも、それを楽しんでいただけたのが、不思議だった」と笑った。
「本当に緊張したが忘れられない経験だった。『クモの巣』は、私の演技人生でとても特別な作品として残るだろう。あとどれくらい、私は俳優をできるだろうか。何本の映画に出演できるかは分からないが、『クモの巣』は、映画に対する私の心構えを新しくしてくれた作品だ」

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