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映画『クモの巣』主演のソン・ガンホ、8度目のカンヌ…「僕は特別ではない俳優」

2023年05月29日

「ソン・ガンホは、特別ではない人。道端で遭遇することができる人、隣人であり友人のようだ」
キム・ジウン監督の『クモの巣(原題:거미집)』で、「第76回カンヌ国際映画祭」に再び登場した俳優のソン・ガンホは26日(現地時間)、インタビューでこのように語った。
生涯で一度来ることも難しいとされるカンヌ映画祭に4年間招待され、昨年は『ベイビー・ブローカー』で、韓国初となる主演男優賞まで受賞。しかし、自身は「(よくいるタイプの人だから)監督のプレッシャーを軽減できる俳優」だと謙遜した。
「カンヌ映画祭の主演男優賞の受賞はもちろん、人生最高の瞬間だった。しかし俳優は、マラソンランナーと違い、終わりがどこなのかを知らずに走り続けなければならない。賞はその過程に力を与える一種の中間地点のような意味に過ぎない。賞のゆえにこれから進むべき道が変わったり、特別な環境が作られたりするとは思ってはいない。そうすべきではないといつも思っている」
ソン・ガンホがカンヌに来るのは今回で8度目となる。2006年の『グエムル-漢江の怪物-』をはじめ、『シークレット・サンシャイン』(2007)、『渇き』(2009)、『パラサイト 半地下の家族』(2019)など、韓国映画界に大きな足跡を残した作品と共にカンヌを訪問した。
彼は「カンヌに4回来ても、5回来ても、また別の作品の世界がある監督や俳優たちと来るということに大きな意味があると思う」とし、「大韓民国最高の俳優たちに拍手を送る」と同僚たちに功を譲った。
パク・チャヌク、ポン・ジュノ、イ・チャンドン、是枝裕和など世界的な巨匠の作品でカンヌに来ていたソン・ガンホだが、今回の作品が持つ意味はもう少し特別なようだ。
2008年の『グッド・バッド・ウィアード』以来、15年ぶりにキム・ジウン監督と共にカンヌの舞台に立ったためだ。
ソン・ガンホは「当時は、あまり思い出がなかったが、今年は一緒に来た俳優たちが多く、滞在する期間も長くて、忙しい日程だがたくさんの思い出を作っていく」と述べた。
劇中、ソン・ガンホは、キム・ジウン監督のペルソナと見られる1970年代の映画監督“キム・ギヨル”を演じた。維新政権の検閲と劣悪な制作環境の中でも、傑作を作るという一心で、すべての重荷を背負う。撮影が終わってからは一人で椅子に座り、セット場を眺める。
ソン・ガンホは「いくら演技だとしても寂しいと思った」とし、「妄想と夢を行き来しながら、絶えず自分を検閲し、その中でも自ら立ち上がり決定する過程を見ると、非常に寂しい作業だということが分かった」と述べた。
彼が映画監督を演じるのは、1990年のデビュー以来、初めて。劇中のキム・ギヨルは、外見や作品スタイルが故キム・ギヨル監督を彷彿させるが、特定の監督を参考にはしなかったという。
ソン・ガンホは「その時代の映画現場や監督たちの全体的なオマージュだと思い、役をこなした。この映画はグロテスクだが、寓話であるため、そんな方向に(キャラクターを)構想してアプローチした」と説明した。
彼は実際に映画監督に挑戦する思いはないかという言葉に、「10年前からそんなふうに言われているが、そもそも演出に挑戦するつもりはない」と笑った。
「監督の才能や能力がないため、絶えず俳優として挑戦するのが正しいと思う。(俳優陣)皆が“よい作品”という目標のために、一緒に走っている。みんなで一緒に監督の役割をしているのだから、監督をやることよりもっと立派なことではないかと思う」

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