歌手ソヒャン、「歌手を辞めようかと悩むこともあった…痛みがあるから奇跡もやってくる」
2022年09月13日

「歌は完ぺきに歌って感動を与えるものではなく、ありのままを話すものだった。私に痛みがあるからこそ、また違う痛みを持つ他の人に受け入れられる」
歌手ソヒャンはここ数年間、コロナ禍と共に自身だけの暗くて長いトンネルを通ってきた。爆発的な歌唱力で名を広めた彼女にとって、致命的な肺炎にかかったのだ。
いつ出るか分からない症状であるため、“ステージ中に症状が出るかもしれない”という、これまでなかった舞台恐怖症までも患った。20年以上続けてきた歌手生活を辞めるべきかと悩みも深まった。
そうするなかで、ふらりと旅したアメリカのニューヨークで接した言葉が歌手人生のターニングポイントとなった。
「恐怖そのものを恐れるより大きな恐怖はない」
ソヒャンは最近、インタビューで「痛みがあるからこそ奇跡も来る」と、これまでの経験を淡々と明かした。
彼女は「歌をできないと考えたのは、結局恐れのせいだった」とし、「怖いからといって何もしなかった場合の5年、10年後の自分の姿はどうだろうと考えてみた。そうしてみると、いっそ“イチかバチか”韓国に帰ってやってみようという思いになった」と述べた。
そうしてある音楽バラエティ番組に出演した。どんなにコンディションが良くても、手に汗握るほどの緊張に追い込むサバイバル番組だ。
ソヒャンはこの番組で、肺炎というハンディキャップを抱えながらも、実に6回にわたって1位の座に就いた。歌唱者は覆面をかぶっており、敗退して覆面を脱ぐまで誰が歌っているのか分からない、ライブステージだけで投票が行われるという点で驚くべき結果だった。
彼女は「この番組の後、別の音楽バラエティにも出演した。私の声の状態は良くなかったのに、聴く人はもっと慰めを受けていた」とし、「これを見て私もとても不思議だった」と振り返った。
その番組が放送されていた2020年から新型コロナウイルス感染症が世界を震撼させた。幸いにも防疫規定が緩和される時期とうまく重なり、彼女は、後輩歌手のチョン・ドンハと共に全国ツアー「戦慄」を開くことができたという。
ソヒャンは「この2年間は、(コンサートを通じて)私の声を回復させる時期だった」とし、「私に会いに来たファンの前で歌うと気持ちも楽になり、舞台恐怖症が消えた。観客が私に “癒し”をプレゼントしてくれた」と述べ笑った。
彼女は昨年、歌手ペ・ダヘとPeppertonesのイ・ジャンウォンの結婚式で祝歌を歌った。この歌がほかでもなく、自ら作詞に参加した「Letter」で、今月4日に音源サイトを通じて正式発売された。
「Letter」は穏やかなギターとピアノのサウンドで始まり、ソヒャンだけの落ち着いたボーカルと感性が調和する楽曲だ。彼女がOSTを除いて新曲をリリースするのは、2020年の「Stay」以来、実に2年ぶりとなる。
ソヒャンは「Letter」で、「大切だったすべての記憶の中に/悲しみがあった/だけど あなたもいたことを知っていますか/だから私は好きです」と温かい癒しのメッセージを伝える。
彼女は「今回の楽曲では、音楽性よりメッセージを伝えたかった」とし、「“あなた”がいるからすべての瞬間が私には思い出で奇跡だということ」と紹介した。
そして「悲しみと痛みが多い時代。避けられない悲劇があまりにも多い。しかし痛みも自分の“財産”だと考えてみてはどうだろう。前に進むと誰かが自分にとって奇跡になる可能性があり、私も誰かにとっての奇跡になりえる」と付け加えた。
ソヒャンは「困難を経験してこそ、誰が自分にとって大切な人なのか分かるという言葉がある」とし、「私の歌を聴く方々が、そんな宝石のような人に出会う勇敢な愛をしてほしい」と述べた。
シングル「Letter」には、収録曲として「Amazing Grace」も盛り込まれた。
CCM(コンテンポラリー・クリスチャンミュージック)歌手としてキャリアをスタートさせた彼女が、今まで幾度となく歌ってきたこの有名な聖歌を、なぜこの2022年9月リリースするのか気になった。彼女と会話をしながらこの疑問は、雪解けのように自然と消えた。
絶望と痛みを勇気で乗り越えたこの数年間の過程自体が、奇跡だったという“自己告白”なのだ。
彼女は「『Amazing Grace』をレコーディングしながら涙があふれた。痛みを経験したことが私にとっては祝福だと感じた。これまで経験したことが走馬灯のようによぎり、これまでの『Amazing Grace』よりも感激して胸がいっぱいになった」と明かした。