クォン・サンウ主演映画『神の一手:グィス編』、囲碁アクションに漫画的な想像力を用いて前作と差別化を図る
2019年10月30日

5年前356万人を呼び集めた映画『神の一手』で刑務所の独房に閉じ込められたテソク(チョン・ウソン)は、壁を隔てた相手とノックで碁を打つ。テソクが一度も勝ったことのない壁の向こうの相手は「グィス」。劇中、「鬼のような手を打つ者」という台詞に言及されるだけで、一度も姿を現わさなかった。
来月7日に韓国で公開される『神の一手:グィス編(原題:신의 한 수: 귀수편)』は前作から15年前にさかのぼり「グィス」の物語を描いた。続編ではなく派生作品としてのスピンオフとなる。
映画の目標は比較的明確だ。囲碁の醍醐味である頭脳戦は最初から関心の圏外だった。さまざまな対局方式とスタイリッシュなアクション、個性あるキャラクターを通じ楽しさと見どころを与えることに重きを置く。現実に根付くよりはファンタジーと漫画的な想像力を果敢に用いて前作との差別化を図った。このような試みは“神の一手”とまではいかなくても、勝機を掴むのに功を奏した。娯楽映画として自らの役割を果たした。
柱となるあらすじは単なる血の復讐劇である。幼い時にたった1人の姉と師匠を失い、1人残ったグィスが修練を経た後、賭け碁盤に飛び込み復讐する過程を描いた。全国を巡りながらベテランたちを1人ずつ撃破していく過程はさながらコンピューターゲームを想起させる。碁盤の数手を見通しながらも自分の運命は一寸先も見えないベテランたちの戦いがとても緊張感を持って描かれており、すらすらと読める武侠小説のようだ。
前作を観ていなかったり、囲碁がまったく分からなくても作品に没入するのに壁はない。碁盤をはさんで繰り広げる知恵対決よりは心理戦や棋戦に重点を置いたからだ。
最大の見どころはさまざまな対局スタイルだ。碁盤の座標を頭の中で全部覚えて数えられたり、1色の碁だけで打つ「一色碁」、1人が数人と対局を行う「多面打ち」など多彩な試合方式が目を引く。グィスと巫女が透明な碁盤で対局を繰り広げ相手の神経を刺激するくだりはホラー映画に劣らず緊張感を醸し出す。
「死活」、「着手」、「敗着」、「秒読み」、「布石」など日常で多く使われる囲碁用語の数々が前作に続きサブタイトルとして登場し、構成を支えた。
得意の伝統アクションで帰ってきたクォン・サンウは碁盤のようなしっかりした腹筋とともに武術実力を遺憾なく発揮している。セリフよりは身体と表情で主に演技するが、彼によく似合う服を着たようだ。
映画は全般的に重い方だが、「トン先生」を演じたキム・ヒウォンがコミカルな演技でバランスよく重心を取っている。
登場人物のほとんどは男性キャラクターである。一部の女性のキャラクターは男性たちの復讐のための名分や「品揃え」として登場するだけだ。
武侠小説のように好みによって本作品に対する好き嫌いが分かれそうだ。いったいなぜ、碁盤に全財産を、手首を、そのうえ命まで賭けたのだろうか、最後まで理解できない観客がいてもおかしくない。前作が青少年観覧不可であったなら、本作品は15歳以上観覧可である。多少残酷なシーンが登場するが、この作品の世界観の中では容認できるレベルだ。新人のリゴン監督による長編デビュー作である。